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ホテルをチェックアウトしてバラムケ
ターミナルへ歩く。10分ほどだ。キャスター付の荷物ならなんのことはない。タクシーに乗ることもなかったのだ。そこを100spも取ろうとした初日のタクシー
運転手め。
停車場に入ると,誰かが声をかけてくる。「レバノンに行きたいの」と言うと,「あっちだ」と連れていってくれた。とりあえずチケットは手にした。じゃあ腹ごしらえだ,と近くのスタンドに入った。
小ぶりの可愛いコロッケが並んでいる。これがうわさに聞く,シリアコロッケか?「じゃ,これ。」と指差すと,「ほかは?」「トマトは?キュウリは?」
次々と聞いてくるので,「じゃ,それも」「これも」といってるうちに,シュワルマのヘルシー野菜サンド版ができあがった。なんだ,コロッケを単品で食べるわけじゃないのね。レモネードも買って,外に出て立って食べようとすると,シュワルマサンドを作ってくれたお兄さんが,牛乳瓶を入れる箱を立てて,ゴミをはらって紙をしいてくれた。簡易腰掛を作ってくれたのだ。
シュワルマサンドにぐるぐる巻かれた紙が取れずに奮闘していると,
しょうがないなあという感じで,こうやって取るんだよと,するするっと紙を取ってくれた。その後もそばにいて何かと世話を焼いてくれる。
わんぱく坊主どもが何かわめきながら近寄ってきたところを追い払ってくれた。陽射しが強いので
コートのフードをかぶっていたのだが,気づくと日陰の中にいた。私が食べ終わるまでさりげなくそこに立ち,自分の体で日陰を作ってくれていたのだ。 君のはここね,と運転手が特別に取っておいてくれた助手席。発車まではまだ15分ぐらいある。おとなしく座って,さっき世話を焼いてくれたお兄さんの仕事を眺めていた。店にいたほかの若い男の子達が,私が去ると,なんだよーおまえーってな感じで彼をこづいて冷やかしていた。なんか中学生に戻ったみたいな気分だよ。ポッ。 守られて世話焼かれて,ああ,これがアラブの男と女の関係なんだなあ,なるほど。押し付けがましくもなく,見返りを求めないさりげない思いやり。若いのに ,大したもんんだ。 やがて発車時間が迫ってきた。「写真とっていい?」とジェスチャーで聞くと,「ぼく?」と嬉しそうに車の前に出てドライバーに叱られていた。「写真撮るんだからちょっと待ってよ」と言って(たと思う)バスの前に仁王立ちになり,ポーズを取った。パチリ。 発車直前の短い間に,今度は急いでお茶を届けてくれた。2人分,ドライバーにも。飲んでみると甘いお茶。どうもありがとう。とうとう彼の名前さえ聞 けなかったけれど,でも,明日ここに戻ってきたらまた会えるだろう。 お天気は上々だし,素敵な出会いはあったし,朝から上機嫌。景色もいい
し,特等席の助手席からの眺めもよし。今日は何かいいことありそう!
レバノンの首都ベイルート行きのバスはマイクロバスで,中にはぎっしり30人ほどが乗っていた。何の用事
があるのかわからないが,年齢層は働き盛りの20-40代が多いようだった。旅行者らしき人はいないようにみえる。少なくとも外国人は誰もいなかったようで,レバノンとの国境で外国人用
の窓口に並ん
だのはそのバスでは私だけだった。バスの同乗者たちは,特等席を占拠している東洋人の女性を覚えていたのか,国境や休憩所で止まるたびに,バスはあっちに移動して待ってるよとか,もう出発するよとか
言って呼びにきてくれたりした。皆,優しい。 レバノンビザは48時間滞在は無料だった。ありがたい。 国境付近に来るとダンキンドーナツ,入国するとマクドナルドの看板が見えた。こんな派手な看板はシリアでは見なかった。レバノン側には外国資本がたくさん入っているようだ。ほかにも,東芝,ナショナル,パナソニック,サンヨー(はダマスカスにもあったけど)
の色とりどりの看板。なんだか広告塔ばかりが目立って見える。資本主義の国に来た!という実感がわく。 入国管理に入る前に両替屋に呼び止められた。ビザ代に必要かと思ってとりあえずシリアポンドから両替したが,48時間滞在ビザは無料だったためここで
の両替は必要なかった。その後もホテルや街角で見つけたATMでVISAからキャッシングできたので特に両替する必要はなかった。 国境からはどんどん山をくだり,海辺まで来るとそこがベイルートだった。建物も,走っている車も,道行く人々も,洗練された都会の雰囲気。 服装も全身を覆うマントやスカーフではなく,西洋的なシャツにズボンというスタイル。女性も体を隠していない。中近東というよりも,ヨーロッパの一都市というイメージだ。 レンタカーを借り,昼食を取り,北東にある遺跡,バールベックへ向けて出発。その辺りで宿をとろうと思っていた。シリアに比べてレバノンの面積は小さく,ベイルートから国の北端まで 行ったとしても100km位しかないから,その気になればすぐにでも一周できてしまうような感覚でいた。好奇心にかられてすぐ寄り道してしまう自分の性格を省みず ,いつも甘い見積もりをたてては失敗しているというのに…。
気を取り直し,再び出発。思ったよりも時間がかかり,バールベックに着いたときには夕闇が迫っていた。遺跡への入場時間には間に合わず。仕方がないので,遺跡の周囲の壁が少し割れているところから
,バールベック遺跡の一番有名なジュピター神殿の6本大列柱だけでも見ようと,横道に入って歩いているときのこと
だった。どこからともなく,男の子二人がついてきた。東洋人の女性が珍しいただの無邪気な子どもかと思っ ところが,その先,旅人の泊まれそうな宿がちっとも見つからない。おまけに道を間違えて行きつ戻りつ。こうなったら海沿いの町にでるしかない,と決めて西へ向かうと ,それは思ったよりも険しい山道で,日はとっぷり暮れるわ,他に車はいないわ, 街灯なんて皆無の真っ暗な中を月明かりの下たった一人で走っている。こわいよー。こわいよー。今度こそ本当に大ピンチ! ガラ… 何か音がしなかった?
誰? 車を止めて前方をよく見ると,大きな石が転がっていた。岩が崩れ落ちた音だったのでした。 ひー。びっくりしたよー。もぉぉぉーっ。
涙目になりそうなのをこらえつつ(涙で道が見えなくなったら余計危険だから),必死に山道を進む私。地図からはこんなに標高差があるなんてわからなかったのよ。ああ
,失敗。
いくつかの尾根を越えてようやく一軒のホテルを発見!スキーシーズンには山小屋風ホテルとして繁盛しそうだが,今の季節はいかにもシーズンオフといった感じで
,他に客がいるとも思えない
。でも,受け入れてくれて一安心。そういえば現金があまりなかった。おそるおそる聞いてみるとギリギリで泊まれる額。よかったぁ。 食堂の隣には暖炉やソファがあって,なかなかくつろげそうなところだった。夕食もちょっと辛目の羊肉でおいしかった。でも,人里離れた山中で客もいなくて,ひっそり寂しい感じ。早々に部屋に戻った。 長いながーい一日が終わった。明日はベイルートに引き返して,そのままダマスカスへ戻る。バスが着く明日の夕方には,またかの君に会えるかしら。 |
コラム: 三猿 |
三猿とは,それぞれの両目・両耳・口を両手でふさいでいる3匹の猿の像である。諺の「見ざる・聞かざる・言わざる」を表したものといわれ,特に,日光東照宮の彫像が有名。 孔子の教えでは,「しざる(四猿)」も加えて4つになるらしく,四体目の猿は,股間を抑えている。
実は,「見ざる・聞かざる・言わざる」の表現は古くから世界中にあるらしく,英語では,"see no evil, hear no evil, speak no evil.(悪事は見るな,聞くな,話すな)"。言語や地域によって,意味も少しずつ異なるようだ。猿に限らず,様々な動物や人で表現された「見ざる・聞かざる・言わざる」のコレクターや研究者も多い。
私設ガラクタ博物館 http://www013.upp.so-net.ne.jp/terahaku/index.htm
管理人さんが申(さる)年生まれの為か,猿に関する情報が多い。
世界の三猿 http://www013.upp.so-net.ne.jp/terahaku/minzokusanen.htm
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<このページの最終更新日:08/10/30 >